2022年11月23日

同型エンジンなれど

 GRヤリスに乗っていると、見過ごせないクルマがある。同型エンジンとGR-FOUR 4WDシステムを搭載するGRカローラだ。
 GRカローラのエンジンはG16E-GTSと、型式はGRヤリスと同一だがスペックは向上している。それに伴いエンジン系を強化する変更がされている。

 まず特徴的な変更は3本出しマフラーだろう。中央の排気口にバルブを備えたデュアルステージエキゾーストとなっている。静粛性を確保しながら背圧低減を実現して、出力向上に貢献している。
 バルブの制御条件を見てみよう。IG-OFF・始動・アイドリング時は開。回転数による開閉条件は、4500rpm以上になると開、4300rpmを切ると閉。速度条件では、30km/h以上になると閉、27km/hを切ると開。
 高回転域でバルブを開くのは理解できるが、低速時にバルブを開く理由はよく分からない。

 次にエンジン内部の変更点を見てみる。

・ピストンの材質を高強度の新開発材料に変更
・エキゾーストカムシャフトの後端に軸受けを追加
・バルブスプリングを改良
・バルブラッシュアジャスタのオイルリーク量を従来より厳しく管理
・高圧フューエルポンプの最大吐出圧増強(22MPa→26MPa)
・EX側VVT-iギヤASSYにアシストスプリングを追加

 約1割の出力向上に対して、これほどの対策が必要になるとは。

 ちなみに、使用できるエンジンオイルについても変更されている。GRヤリスではLSPI対策の関係でSPまたはSN PLUS規格が指定されており、SN規格のオイルは使えなかった。それがGRカローラではSN規格のオイルが使用可能となっている。

 駆動系にも変更が加えられている。
 まず最終減速比がGRヤリスに比べて3.0%増で、車重増大に対応している。
 GRヤリスでは導電性ハブグリースを使用して足回りに発生する静電気を除電していたが、GRカローラでは通常のハブグリースになっているようだ。
 シフトポジションインジケータも追加されている。この仕組みがなかなか興味深い。シフトレバー部にセンサを備えてシフトポジションを検出しているのではない。このクルマは iMT(オートブリッピング機能)のためにミッションの入力側に回転数センサを備えている。またABSなどのために車輪速センサもある。これらセンサから得られる、ミッション入力側回転数と車輪速との比率からシフトポジションを算出しているのだ。既存の信号を利用してシフトポジションを判別するうまい仕組みだ。
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2022年11月11日

吼えないラリーカー

 今日はラリージャパンのリエゾン中のラリーカーを見るために、豊田市まで行ってきました。
 とりあえず、エリア付近のカントリーレストラン渓流荘で腹ごしらえの予定(要予約)。ナビに従って向かうと、なんとラリー関係の道路封鎖で進めません。迂回路を探すのに手間取って予約の時間に10分遅刻(何とか許容範囲か)。

03_ダムカレー@渓流荘.JPG
 名物のダムカレー。ネパール風のスパイシーなカレーです。以前のように「決壊!」とか言って遊ぶほど若くはなくなった……(参考:「黒部峡谷の深奥(後編)」)。

13_GRヤリス_ロバンペラ.JPG
 ロバンペラ選手のGR YARIS Rally1 HYBRIDです。スルスルと音もなく走ってきます。住宅地なので騒音に配慮してEVモードです。

14_HEV ZONE終了.JPG
 HEV ZONE終了のサインボード。ここ以降はエンジン始動が許されます。幹線道路への合流で派手なエンジン音を響かせて走り去っていきました。
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2021年07月17日

前輪のみ駆動せよ

 プロペラシャフトの電子制御カップリングで後輪へのトルク伝達を制御するオンデマンド4WDには、通常FFモードが存在する。当たり前だが、カップリングの継合をOFFにするだけなのだから簡単だ。
 実はGRヤリスにもFFモードがあることをご存じだろうか?通常の操作では無理だが、特別なコマンド入力でFFモードに入ることができる。そのコマンドは以下のようなものだ。

@サイドブレーキON
AIG-ON
BブレーキペダルON,OFF,ON
CサイドブレーキOFF,ON,OFF,ON
DブレーキペダルOFF,ON,OFF,ON


 TRC、VSC、プリクラッシュセーフティが全てOFFになれば成功だ(入力に30秒以上かかると失敗します)。
 解除方法は、FFモードで60秒以上経過後、IG-OFFして60秒以上待機する。

FFモード_AWDモニタ表示.JPG
 加速するとAWDモニタで前輪にだけ駆動力の表示が点灯し、FF状態になっていることが確認できる。1速全開加速をすると前輪が激しく空転する。
 そう、インパネの警告灯の表示通りトラクションコントロールは働かない。他の安全機能やヒルスタートアシストも働かないので、安全のため安易に公道走行しないように願います。

 しかし、このFFモード、何に使えるかなと考えたが、パワーチェックにかける時に2駆料金でやってもらうとか?
 もしくは、後輪にテンパータイヤを履かせた場合に、駆動系保護やVSCの誤作動防止のために使うといいかもしれない(参考:「テンパータイヤを手に入れろ」)。

 ちなみに、上記コマンドではBとDでブレーキペダルを2回ずつ踏んでいるが、これを3回ずつにすると、AWDテストモードに入れます。

AWDテストモード_インフォ表示.JPG
 マルチインフォメーションディスプレイに"AWD TEST MODE"と表示されたら成功だ。こちらはIG-OFFにするだけで解除されます。

AWDテストモード_AWDモニタ表示.JPG
 AWDモニタはなぜか駆動状態に関係無くフル点灯になる。

 このAWDテストモードは、EXPERTモードでも完全にOFFにできなかったVSC機能を完全にOFFにできる(ヒルスタートアシストもOFFになるので要注意)。サーキット走行で活用できるだろうか。
posted by まいすた at 15:42| Comment(0) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月05日

テンパータイヤを手に入れろ

 GRヤリスにはテンパータイヤのオプション設定が無く、パンク修理剤のみだ。
 しかし、過去にタイヤウォールを損傷した経験上、パンク修理剤で対応できない事態に備えたい。それに普通のパンクでも、パンク修理剤は問題が多い。修理剤を使ったタイヤは修理ができず買い替えになるし、空気圧センサも交換になる。数万円の出費だ。普通のパンク修理なら数千円で済む。
 ということで、他車種のテンパータイヤの流用を考えた。

 で、とりあえず試着してみないことには、始まらない。周囲にテンパータイヤを搭載しているクルマを持っている人間がいないか探すと、妹一家のトヨタ・ヴォクシー(ZWR80)が搭載していることが分かった。
 早速、テンパータイヤを借りてきた。ヴォクシーのテンパータイヤのサイズは、T135/80D16だ。偶然、GRヤリスの225/40R18と直径が近い。これを後輪に試着してみる。そう、GRヤリスはFFベース車なので、テンパータイヤは前輪に装着してはダメで、後輪に付きさえすればいい。前輪がパンクしたらどうすればいいかと疑問が湧くだろうが、その時は後輪をテンパータイヤと交換し、はずした後輪をパンクした前輪と交換すればいい(ヴォクシーのマニュアルにもそう記載されている)。

テンパータイヤ装着.JPG
 さて、いよいよ装着してみると、ぴたりとはまった。ナットを装着し、タイヤを手でくるくると回してみるも、キャリパとの干渉は無いようだ。
 その辺を8kmほど走ってみた。LSDとの干渉を心配したが、特にハンドルを取られることも無く、真っ直ぐ走る。直径がほぼ同じだからだろうか。
 はっきり言って、タウンスピードでは全く違和感が無い。テンパータイヤを履いてるいるとは思えない。VSC、AWDシステムも特にエラーを吐くことも無かった。
 走行後、すぐ車体下に潜って、リヤデフキャリアと電子制御カップリングを触ってみたが、異常過熱もしていない様子だ。

 早速、トヨタモビリティパーツまで行って、ホイールを発注してきた。品番は、42611-28691である。次に、タイヤ館でテンパータイヤも発注してきた。サイズはT135/80D16。後日ホイールをタイヤ館に持ち込み、タイヤを組んでもらって完成だ。
 さて、テンパータイヤをどこに積むかだが、ラゲッジルームには立てて入れれば入った。だが、これでは固定されていなので左右にゴロゴロ転がることになるし、荷物を積みたい時に邪魔だ。思案したあげく、3人以上乗ることがほぼ無いので、助手席の背後、後席の足元に立てて積むことにした。
搭載状態.JPG
 この位置だと車両の重心に近いので、ヨー慣性モーメントがあまり増加せず、ほとんど旋回性を悪化させない。運転席でなく助手席の後なのは、重量バランスを考えてのことだ。GRヤリスは右側の方が重い上に、運転手1人で乗ることが多いので。あと、臭いが気になるのでビニール袋に入れてある。
 これでパンクへの備えが万全となった。

 ちなみに、3人で乗る時に、3人目を運転席の後に乗せて、助手席の後のテンパータイヤをそのままにしておいてはいけない。側面衝突を受けた際にテンパータイヤが後席乗員を傷害する可能性があるからだ。必ずテンパータイヤはラゲッジスペースに移さなければならない。

※テンパータイヤの装着は、駆動系に深刻なダメージを与える可能性があるため、自己責任でお願いします。当方は一切の責任は取れません。
posted by まいすた at 22:42| Comment(0) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月03日

三角表示板も軽量化

 クルマにはいざという時に備えて、三角表示板を積んでいる。そして、GRヤリスには、ラゲッジスペース下に三角表示板の収納スペースらしきものがある。しかし、手持ちの三角表示板は大きすぎて、その収納スペースに入らない。それに結構重い。軽量化を尽くしているGRヤリスには相応しくないだろう。
 ということで、軽量・コンパクトな三角表示板に買い替えた。

 収納スペースの寸法を測り、入るものとして、「EM-352 エマーソン 三角停止表示板」を選択した。

 新旧で視認性を比較してみる。
新旧比較_2.JPG
 左が古くから使ってきたもの、右が新しく購入したものだ。新しい方がわずかに小さいが、視認性にはほとんど差が無いだろう。ただ、軽いため、耐風性に少し不安が残った。

 次に、収納状態を比較してみた。
新旧比較_1.JPG
 上が古くから使ってきたもの、下が新しく購入したものだ。かなりコンパクトになっていることが分かる。重量も約1kgの軽量化になる。

収納状態.JPG
 ラゲッジ下の収納スペースにもすっぽり収まった。これでラゲッジスペースも少しすっきりした。
posted by まいすた at 20:47| Comment(0) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月02日

ブースト圧を測れ

 GRヤリスにはインフォメーションディスプレイにブースト計を表示する機能が付いている。しかし、この純正のブースト計、目盛が-1,0,+1,+2の4目盛しかなく、ブースト圧を数値で読むのが非常に難しい。これでは、ブースト値を日常管理するのに都合が悪い。
 ということで、新たにブースト計を設置することにした。

 純正ブースト計が電子式のため、追加のブースト計には機械式が欲しかった。なので、HKSの「ダイレクトブライトメーター」を選択した。
ブースト計.JPG
 ダッシュボード上に本体を設置し、圧力配管と照明用電源線を接続する。

 圧力配管のインマニ側の取出しには苦労した。インマニ圧の取り出せるチューブを探したのだが、一切見当たらないのだ。唯一圧力を取れそうなのが、キャニスタパージ用ホースだった。
 そこで、このホースを真ん中で切断し、「大野ゴム/ホースジョイント DH-1170」を噛ませて圧力取出し用配管を接続した。配管の室内への引き込みは、暫定的にドアを経由させる形にしている。いずれはバルクヘッドの適当なグロメットから引き込む形にしたい。
ブースト圧取出し_3.JPG

 照明用電源の取出しには、グローブボックスをはずした右上側の奥にある電源取出し用のオプションコネクタを利用した。このコネクタ、なぜか黒いビニールテープでぐるぐる巻きに隠されている。テープを切開してコネクタを取出し、「電源取り出しオプションカプラー」を接続して、イルミ電源をブースト計につないだ。

 実際に走らせてみると、針のブレも無く、純正のブースト計と追加のブースト計で針の動きがシンクロしていて、問題無いようだ。
posted by まいすた at 22:09| Comment(0) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月31日

外部入力を実現

 GRヤリスのディスプレイオーディオには、一つ問題がある。外部入力が無いことだ。実験で観測用カメラを仕掛ける関係上、外部入力は必須である(参考:「デフレクタの効果」)。
 ということで、外部入力キットの装着を検討した。

 最初、データシステムのVIK-T73を考えた。うちのクルマにはTVが付いているので、どうせならTVキット機能も付けようと思って、このキットを検討した。しかし、このVIK-T73のTVキット機能はスイッチによる切り替え方式である。インパネ周りにスイッチを配置したくなかったので、TVキット機能無しのVIK-T72と、TVキット機能がオートになっているエンラージ商事のTV&ナビキャンセラーを併用することにした。
 このTV&ナビキャンセラーを選択したのは、VIK-T72はディスプレイオーディオの4つ並ぶコネクタの真ん中の2つに繋ぎ、TV&ナビキャンセラーの方は左端の1つに繋ぐからだ。使うコネクタに重複が無い。これが他社のキャンセラーでは、VIK-T72と同じコネクタも使う必要がある物があり、両キットの直列接続が必要で、不具合が出る心配があった。

 実際の装着には、丁寧な手順書が付いているので、全く問題無かった。両キットの直列接続が無いのは、配線がスッキリして良い(ディスプレイオーディオ裏のスペースが狭いのでこれは重要)。
 両キットの併用でも、今のところ不具合は見られず、外部入力もTVキットも正常に動作している。
posted by まいすた at 00:27| Comment(0) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月29日

新たな相棒

 クルマを買い換えました。前のクルマは、20年20万kmほど乗って、もう限界でした。エキマニに亀裂。マフラーは腐食で穴だらけなのを耐熱アルミテープでぐるぐる巻き。リヤサスのアッパーサポート付近をはじめボディ各所に腐食で大穴。フロントサスペンションのピロボールはガタガタ。ミッションのオイルシールからはオイル漏れ。ミッションのシンクロがダメになっていてガリガリ鳴る。フルパワーでクラッチが滑る。と、まさに満身創痍。
 新車に求める条件は、コンパクト、MT、4駆、LSD、車重1t当たりエンジン出力100kW以上。そう、ちょうどおあつらえ向きのクルマが出ています。

 ということで、新しい愛車はトヨタの「GRヤリス・RZ"High performance"」になりました。
210504_全体像.JPG
 純白がまぶしいです。フェンダの迫力が凄い。発注から納車まで4ヶ月待たされました。長かった。

 乗ってみると、圧倒的な剛性感、滑らかな乗り味に感心します。前に乗ってた車が、坂道発進時に6000回転でクラッチミートしなきゃならない低域トルク皆無のエンジンだったこともあり、低域トルクも十分に感じます。
 しかし、ブリッピング時のスロットルレスポンスの悪さはどうにかならないでしょうか。回転上昇にラグがあるので、どうにもギクシャクしてしまいます。慣れれば改善するでしょうか。
 あと、試乗の時から問題視していたシート。シートリフタを一番下まで下げても高過ぎる座面、不足しているホールド性。なので早速、交換しました。
レカロSR-7.JPG
 レカロSR-7を導入しました。シートレールもレカロ純正のワンポジションタイプを選択。

 このシートレールは、別にローポジションレールとは謳っていないのですが、アダプターフレーム無しで装着すると、純正シートより座面が低くなります。どのくらい低くなったか、レーザーで計測しました。
座面高さ測定@レカロ.JPG
 純正シート最下段でのヒップポイントとルーフとの間隔は944mmでした。レカロに交換後は974mmになりました。30mm低くなっています。しかし、このレーザー距離計は便利すぎます。継ぎ足し計測になりますが、ペットボトルロケットの飛距離計測にも使えます(最近飛ばしてませんが)。

 純正シートではヘルメットをかぶるとつっかえそうなヘッドクリアランスでしたが、それが改善しました。狭っ苦しいルームミラーとディスプレイオーディオの間からの視界も、ほんのわずかに見通しが良くなりました。
 そして、何よりもホールド性の改善が著しいです。クルマの運動性に見合ったホールド性になりました。
posted by まいすた at 01:27| Comment(2) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月07日

バランスをとれ

 前回、ホイールナットを買い替えたことを書いた(参考:「チタンの輝きは素晴らしい」)。ここで、一つ問題が発生した。購入したナットセットにはロックナットが付いていないことだ。そこで、ロックナットを導入することにした。
 導入するロックナットは、最大限のセキュリティを考慮して、ナット周囲に空回りするリングのついたタイプの中から選ぶこととした。

 いろいろと調べると3種類見つかった。
 まずは定番の「マックガード」で、その中でも最高のセキュリティを誇る「ウルトラハイセキュリティロックナット」だ。
 2つ目は、「スターロック」だ。空転するカラーと、花柄の内溝はマックガードそっくり。
 3つ目は、「Sporacingrts ホイールロックナット」だ。これはよくある外溝タイプに、カラーを追加した形状である。ただこれには問題があって、キーソケットが1種類しかないため、泥棒がこの製品を買っていたら簡単に無効化される。
 キーソケットが1種類のSporacingrtsは論外として、マックガードとスターロックのどちらにするかで迷った。どちらも自動車メーカーに純正採用されている。まあ定評のあるマックガードとした。

 そして、装着するにあたり、重大な問題が発覚した。それは、ロックナットと他のナットの重量差だ。マックガードの重量は、約71gもある。対して、チタンナットは約26gだ。ハブボルトの1か所だけ45g重くなることになる。回転バランスが崩れてしまい、振動が出るかもしれない。
 さて、このハブボルトの位置で45g重くなるというのは、問題になるのだろうか?どの程度の影響になるか検討してみた。

 車輪の回転アンバランスは、余計な重量が回転中心から遠い位置についているほど影響が大きくなる。その影響度合いは、重量・中心からの距離 に比例する(てこの原理)。
 ここで、例えばP.C.D.100で、ハブナットの1つが45gだけ重いとする。対して、ホイールのアウト側のバランスウェイトが貼り付けられている位置の直径が、例えば300mmだったとする。
この時、ハブナットの45gは、ホイールのバランスウェイトの位置で15gのアンバランスに相当する(45g×100mm/300mm=15g)。ホイールのウェイトが5g刻みで貼られていることを考えると、これは無視できない影響だ。
 対策としては、ロックナットの位置の反対側に15gのバランスウェイトを貼り付ければいい。ただ、タイヤ交換の際には、ロックナットの位置が常に同じになるように注意が必要だ。

posted by まいすた at 21:03| Comment(0) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月03日

チタンの輝きは素晴らしい

 超々ジュラルミンのホイールナットを使っていたのだが、そろそろ耐久性が不安になってきたので買い替えることにした。今度は、64チタン合金製のものにしてみた。

 購入したのはDIGICAMの袋タイプ
 面白いのは、世の中には64チタンを謳いながら粗悪な素材を使っているものもあるので、ここは蛍光X線分析の成分分析書を付けて、正真正銘の64チタンであることをアピールしている。アピールしているのだが……後述。

 ただ、購入するにあたりいろいろ調べていたら、興味深いことに気づいた。ネット上に、全く同じ形状のチタンナットが、多くのブランドからリリースされているのだ。

 まずはここ、Spiegelだ。ナットの長さは違うものの、HEXサイズ、ローレット加工の密度・クロスハッチ角度、各部面取り、ネジサイズ表記の位置・フォントが同じだ。だが、何よりも決定的なのは、ここも蛍光X線分析の成分成績書をつけているのだが、公式HPに載せている成績書の波形・成績書番号がDIGICAMのものと同一なのだ(笑)。ちなみに、私のもとに届いた製品に添付されていた成績書も、これらと同一であった。製品ごとに成分をチェックしているわけではないようだ。DIGICAMとSpiegelのチタンナットは製造元が同じODMなのだろう。

 ほかには、IMPULROWENwangan(現在取り扱い無し)、CPR RACING STOREのものが同じ形状に見えるが、Spiegelのような決定的な証拠は無い。
 ちなみに、このCPR RACING STOREはAmazon上にしかなかった。ブランドロゴなどは何も無く価格が最も安いので、ここが製造元なのではないかと思われるが、違うかもしれない。調べると、中国の業者の通販用ブランドのようだ(特定商取引法に基づく表記)。Ningbo Zhanrui Auto Parts Co., Ltd.という会社だ。

 価格では、CPR RACING STOREのものが圧倒的に安いのだが、このストアはAmazon上での評価が微妙なのと、どうしても袋ナットが欲しかったのに貫通ナットしか扱いが無かったので、検品の確かさも期待してDIGICAMのものにした。

軽量ホイールナット.JPG
 重量を量ってみた。チタンナット(左)は、1個当たり26gだった。ちなみに、RAYSの超々ジュラルミンナット(右)は、1個当たり23.5g。ほとんど無視できる差だ。

物性値表.jpg
 材質の強さについては、物性値を見ると、64チタンはクロモリ鋼並みの強度・硬度を誇ることが分かる(ヤング率=剛性だけは劣るが)。

 チタンナットは、超々ジュラルミン並みの軽さとクロモリ鋼並みの強さを兼ね備えたホイールナットといえる。まあ、性能を置いておいても、チタンというだけでロマンがあるのだ(女性がジュエリーを求めるのと同じ心情か?)。
 装着したところ、ネジ山の精度も座面の当たりも問題無いようだった。あとは、ゆるみとか、かじりが無ければ良いのだが。

posted by まいすた at 19:22| Comment(0) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月11日

狭角V6の慣性振動

 リクエストがあったので、狭角V6の慣性振動について計算してみた。

 狭角V型エンジンとは、V型と言いつつ左右バンクが一体となってシリンダヘッドが1つしかない特殊なエンジンだ。クランクシャフトも通常のV型のような隣り合う気筒でクランクピンを共有する形ではなく、各気筒独立となっている。

 バンク角15°の狭角V6エンジン、6000rpm時の慣性振動は以下のようになった。

並進振動加速度.png偶力振動加速度.png
 並進振動と偶力振動の起振加速度のグラフ。

並進振動スペクトル.png
 並進振動の起振加速度のフーリエ解析。
 鉛直軸(x軸)方向の6次の縦揺れが出ているが、その大きさはぼぼ0といっていい弱さだ。

偶力振動スペクトル.png
 偶力振動の起振加速度のフーリエ解析。
 kw'xとkw'yの1次の振動は位相が90°ずれているので、クランク軸(z軸)周りの1次のみそすり運動となっている。鉛直軸(x軸)周りの2次の偶力振動も出ている。よって、直6と違い完全バランスとはならないが、その起振加速度の大きさは、ポピュラーな等爆60°V6と比べて約2/3、同一排気量の直4と比べて約1/8となり、振動は比較的弱い。
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2019年10月31日

速度維持のしやすさ

 ふと思ったが、自動車で一定速度で走る場合、低速と高速では「速度の維持しやすさ」はどう変わるだろうか?考えてみた。

 まず、「一定速度の維持」というのを定義しよう。「デジタル速度計で表示値が変化しないこと」を一定速度の維持とする。つまり、時速100kmで走行している時、速度計が"100km/h"を表示し続けていることを表す。この時、速度計が小数点以下切り捨てと仮定すると、100km/h≦実速度<101km/hという関係になる(現実の速度計は実速度より大きめに表示するが、本質的な問題ではないため誤差は無視する)。
 実速度を1km/hの幅に入れるということで、50km/hでは2%の範囲、100km/hでは1%の範囲と、低速の方が割合で見た範囲が広く、速度維持しやすそうだがどうだろうか?

 次にアクセルの踏込量と走行速度の関係について考える。アクセルの踏込量を大きくするとエンジントルクが大きくなって駆動力が増える。すると自動車は加速するが、速度が増大すると走行抵抗が増える。やがて、駆動力と走行抵抗が釣り合ったところで速度は一定になる。なので、アクセルの踏込量と走行速度は単純な相関関係になる。
 ある速度を狙って踏込量を調整する時、狙うべき踏込量の幅に余裕が多いほど一定速度を維持するのが容易になるので、その余裕の幅を算出すれば速度の維持しやすさが評価できるだろう。例えば、表示値"100km/h"を狙う場合、実速度が100km/hとなるアクセル踏込量と、101km/hとなるアクセル踏込量の間がどの程度の幅を持つかを見ればよい。

 そこで、50km/h時と100km/h時での速度の維持しやすさを計算する。
 手順としては、実速度50km/hと51km/h時、100km/hと101km/h時のそれぞれの必要駆動力を算出し、その駆動力を出力するのに必要なアクセル踏込量を算出する。

 自動車は一般的なコンパクトカーを想定する。
 排気量は1L程度とし、性能はフラットトルクで最大100Nmとする。
 50km/hと100km/h走行時の回転数は同一の2500rpmとなる変速比とする(50km/h時の総変速比は100km/h時の2倍)。
 この回転数で最大トルク100Nmが出る(マニフォルド負圧が0になる)までのアクセル踏込量は50mmとし、この範囲でのアクセル踏込量とエンジントルクは正比例とする。例えば、踏込量20mmではトルクは40Nmとなり、50mmで100Nmとなる(50mm以上踏み込んでも100Nmのまま)。
 駆動輪の動荷重半径は、0.28mとする。
 走行抵抗と速度の関係は、以下の近似式による。

R = 0.54v^2 + 0.39v + 120
R:走行抵抗[N],v:速度[m/s]

 この条件で、各速度、必要駆動力(=走行抵抗)、必要アクセル踏込量を算出すると、
・50km/h時、駆動力230N、踏込量6.09mm
・51km/h時、駆動力234N、踏込量6.20mm
・100km/h時、駆動力548N、踏込量29.05mm
・101km/h時、駆動力556N、踏込量29.50mm

 50km/hでは、踏込量の狙い値に0.11mmの幅が許され、100km/hでは0.45mmの幅が許される。この試算により、100km/hの方が50km/hに比べて踏込量の狙い値に約4倍の余裕があり、低速の方が一定速度を維持しにくいことが分かった。

 ただ、この試算は理想的に平坦な道路を前提としている。実際には、道路勾配や舗装状態、風向風速や前走車の後流、旋回抵抗など、環境要因によって走行抵抗が変動するので、その都度アクセル踏込量を調整してやらなければならない。
 つまり、制御性も速度維持のしやすさに重要なのだ。

 制御性として、まずエンジンのレスポンスを考えてみると、速度の制御周期が数秒程度であるのに対し、時定数(応答遅れ)は無視できるほど小さいのでレスポンスは問題にならないと考えられる。
 ゲイン(アクセル踏込量と出力駆動力の比)は、50km/h時は100km/h時の2倍の変速比なので、ゲインは2倍となり、50km/hの方が過敏な反応を示すので、制御に気を使うことになる。※実際の加減速は、フライホイールなどのエンジンの回転部分の等価慣性質量が減速比により変わる(4倍になる)ので、ゲイン2倍と言っても加減速度が2倍になるわけではない。概算で約1.6倍程度。
 リニアリティは、比例を仮定しているが、上記の微小踏込量の範囲では問題無いと考える。
 制御性の面から見ても低速の方が一定速度を維持しにくいと言える。

 実走行で試したところ、確かに50km/hの方がオーバーシュート/アンダーシュートが大きくなり速度維持がしにくいことが確認できた。

詳細な計算は以下
posted by まいすた at 18:47| Comment(0) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月29日

アルミテープを貼ってみた

 クルマのバンパ裏への導電性アルミテープ貼り付けによる空力効果の確認を実施した(参考:「クルマの帯電状況」)。
 当初、操安性に劣るスタッドレスタイヤを履いている間に評価をしようとしていたのだが、クルマにトラブルが頻発して修理に追われてできず、サマータイヤでの評価になってしまった。

 まず問題になったのが、効果の測定方法だ。ただ「貼ってみて、走ってみて、ドライブフィールを確認する」では、あまりにも精度が低すぎる。
 タフトを貼り付けて表面の気流を比較することも考えたが、クルマの側面に観測用のカメラを仕掛けるのは法的にも安全的にも許されないので断念(参考:「デフレクタの効果」)。
 ドライブフィールを比較する官能評価ではブラインドテストをするのが良いのだが、バンパ裏は手軽に貼ったり剥がしたりできるような場所ではないため、現実的ではない(参考「官能評価の注意点」)。なので、明確な評価基準を設定することにした。
 具体的には、高速道路で90km/h走行時にどれだけ白線に沿って走れるかどうかで操安性の変化を評価することにした。都合の良いことに、東名高速道路の白線は車線逸脱警告のための凹凸がついているので、タイヤが乗ると激しい振動が襲ってくるのだ。この白線の凹凸に、ぎりぎりタイヤのショルダーが乗るかどうかの、軽く「クーーー」と鳴る状態の維持のしやすさを操安性の指標とした。これならセンチ単位のラインコントロール性が評価できるはずだ。

 今年の5月頃から、まずはアルミテープを貼ってない状態で、90km/hでの白線への沿いやすさを評価した。高速道路を走ること20日分を超える回数を実施したが、面白いことが分かった。まず基準となる晴れた風の弱い日では、トライ中の40%程度の時間「クーーー」とうまく鳴らすことができた。残りの60%は白線に乗ってしまって激しい振動が出るか、白線から離れてしまっている時間だ。
 ただこの時に、前を走るトラックがいて、それに近づきすぎると、走行ラインのコントロールが難しくなった。トラックの巻きこす後方乱流のせいだろう。風の強い日もコントロールが難しくなったので、この白線に沿わせる方法は空力特性の変化を捉えるのに"使える"と確信した。
 天候が雨の日もあった。雨の日なら帯電が起こらないので、もしかしたら除電の効果が体感できるかもと思ったが、白線の盛り上がりのため、白線際には水が溜まっており、その抵抗のせいでステアフィールが大幅に変わってしまい、比較できなかった。

 アルミテープを貼っていない状態で、白線への沿いやすさを十分評価した後、9月にクルマのフロントバンパを分解してアルミテープを貼り付けた。
除電テープ.jpg
 写真のように、細長く切ったテープを縦に4枚貼り付けた。場所は、バンパコーナーから側面にかけての境界層が剥離しやすい場所だ。

 基準とした晴れた風の弱い日に、10日分ほど白線への沿いやすさを評価してみると、トライ中の60%程度の時間「クーーー」と鳴る状態を維持できた。コントロール性が向上していた。
 その主な要因は、ステアリングインフォメーションの向上だった。ステアリングインフォメーションがはっきりして、「クーーー」と鳴る状態からタイヤが外れそうな兆候が感じ取りやすくなったのだ。この変化は、ちょうどフロントタイヤ前のデフレクタを付け/はずしした時の変化に似ていた(参考:「デフレクタの効果」)。フロントタイヤ周りの乱流が抑制された効果が出たのだろうと考えられる。
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2017年04月23日

改稿・イニシャルトルクとトルクバイアス比

 以前、多板クラッチ式LSDのイニシャルトルクとトルクバイアス比について書いたが、前回の「イニシャルトルク」の定義の誤解の件も有ったので、あれから新たに得た知見についても追加して改稿します(参考:「イニシャルトルクとトルクバイアス比」)。

 LSDの効果を見るには、両駆動輪のトルクの関係を見ればいい。
 ここで注意が必要なのは、多板クラッチ式LSDはイニシャルトルクを発生させるプリロードの掛け方に2種類あることだ。それによって、トルクの伝達の仕方が異なる。

(1)対向プリロード式(公式な名称ではなく筆者独自の呼称)
 カムがプレッシャリングを押し開く力と、プリロードのスプリング力が対向している、以下の模式図のような構造になる。
LSD_1.png

 昔ながらの一般的な構造で、実際の製品としては、CUSCOのtype-MZなどになります。

 この方式でのLSD作動時の両輪のトルク容量の関係式は、以下のようになる。
 全駆動トルクTの作用したLSDのカムがクラッチを押し広げることで発生する圧着力Fcは、

Fc = tanθ T / 2Rc

θ:カム角,Rc:カム力作用点半径

 また、全駆動トルクTは両輪の駆動トルクの合計になるので、

T = Th + Tl

Th:高駆動側トルク(低速側),Tl:低駆動側トルク(高速側)

 この時の片側のクラッチ板が伝達できるトルクTcには注意が必要。カムが押し広げる力がプリロードを超えて初めてクラッチ板の圧着力はプリロードより増すからだ←これは力学が苦手な人には非常に理解が難しいので要注意
 カムの押し広げ力の大きさで場合分けをして、

Fc < Fpの時:
 Tc = μ Fp Rf = Ti

Fc ≧ Fpの時:
 Tc = μ Fc Rf = Rf μ tanθ T / 2Rc
 (この時、Tc > Ti)

Fp:クラッチ板プリロード,μ:クラッチ板摩擦係数,Rf:クラッチ板摩擦力中心半径,Ti:イニシャルトルク

 ここで、ロッキングファクタλとトルクバイアス比δを定義する。

λ ≡ μ tanθ Rf / Rc
δ ≡ ( 1 + λ ) / ( 1 - λ )

 高駆動側トルクThは低駆動側トルクTlに両側のクラッチ板伝達トルクTcが加わったものなので、

Tc < Ti つまり、Tl < 2Ti / ( δ - 1 )の時:
 Th = Tl + 2Tc
   = Tl + 2Ti

Tc ≧ Ti つまり、Tl ≧ 2Ti / ( δ - 1 )の時:
 Th = Tl + 2Tc
   = Tl + λ ( Th + Tl )

  Thについてこの方程式を解くと、

 Th = δ Tl

 例として、トルクバイアス比=3,イニシャルトルク=50Nmの場合をグラフで表すと、以下のようになる。
駆動配分グラフ_1.png

(2)並行プリロード式(公式な名称ではなく筆者独自の呼称)
 カムがプレッシャリングを押し開く力と、プリロードのスプリング力が並行している、以下の模式図のような構造になる。
LSD_2.png

 実際の製品としては、CUSCOのtype-RSなどになります。マツダ純正のスーパーLSDも(カムの代わりにピニオンギヤの噛合い反力を利用するという違いはありますが)内側からスプリングでプリロードをかけていて、力学的にはこちらと同様となります。

 この方式でのLSD作動時の両輪のトルク容量の関係式は、以下のようになる。
 クラッチ板にかかるカム力や、全駆動トルクと両輪駆動トルクの関係は(1)と同様。
 この時の片側のクラッチ板が伝達できるトルクTcは、

Tc = μ ( Fc + Fp ) Rf = Rf μ tanθ T / 2Rc + Ti

Fp:クラッチ板プリロード,μ:クラッチ板摩擦係数,Rf:クラッチ板摩擦力中心半径,Ti:イニシャルトルク

 高駆動側トルクThは低駆動側トルクTlに両側のクラッチ板伝達トルクTcが加わったものなので、

Th = Tl + 2Tc
  = Tl + λ ( Th + Tl ) + 2Ti

 Thについてこの方程式を解くと、

Th = δ Tl + ( δ + 1 ) Ti

 例として、トルクバイアス比=3,イニシャルトルク=50Nmの場合をグラフで表すと、以下のようになる。
駆動配分グラフ_2.png

 これらを見て分かるのは、駆動輪のインリフト時のトラクション確保には、(2)並行プリロード式の方が低いイニシャルトルクで高いトラクションが得られていいなということだ。
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2017年03月19日

訂正・イニシャルトルクの測り方

 以前、多板クラッチ式LSDのイニシャルトルクを車載状態のまま簡易的に測定する方法について書いたが、申し訳ないことに「イニシャルトルク」の定義に誤解が有ったので、訂正を行います(参考:「イニシャルトルクの測り方」)。

 以前に書いた間違ったイニシャルトルク測定法

(1)両方の駆動輪をリフトアップ(後輪の場合はサイドブレーキを解除)
(2)シフトをロー/パーキングに入れてデフケースの回転を固定
(3)一方の車輪でトルクレンチを使って差動トルクを測定
 (1WAYや1.5WAYだとプリロードの方式次第で、測定時の回転方向によって測定値が変わる場合がある)

 これで測れるのはイニシャルトルクではなく、インリフトなどで片輪が浮いてしまった場合の接地側に掛けられる駆動トルクだ。これがイニシャルトルクであると誤解していた。

 正しいイニシャルトルクの定義は、「一切駆動/制動力をかけていないニュートラル時の左右輪の差動トルク」である。

 なので、正しい測り方としては以下のようになる。

(1)両駆動輪をリフトアップして片側のホイールに棒などを突っ込んで回り止めをする
 (または片側の駆動輪だけをリフトアップ)
(2)シフトはニュートラルにしてデフケースの回転はフリー状態にする
(3)回り止めをしていない車輪の方でトルクレンチを使って差動トルクを測定
 (ニュートラルで測定するので1WAYや1.5WAYであっても測定時の回転方向に測定値は左右されない)

 ※安全のため(1)は両輪リフトアップしての回り止め方式を推奨します
 (片輪接地状態で駆動輪にレンチでトルクをかけるとクルマが動いてしまう恐れがあります)


 ちなみに、上の方で書いた片輪リフト時駆動トルクは、皿バネで多板クラッチの外側からイニシャルトルク用のプリロードをかける(プリロードとカムの押し開く力が対向している)タイプの多板クラッチ式LSDだと、イニシャルトルクの2倍の値になる。
 また、この対向プリロード式は1WAYや1.5WAYであっても、測定時の回転方向によって片輪リフト時駆動トルクの測定値が変わることは無い。

 これが、コイルスプリングなどでプレッシャリングの内側からプリロードをかける(プリロードとカムの押し開く力が並行している)タイプになると、カム角の作用でイニシャルトルクの2倍よりも大きな値(厳密にはイニシャルトルクの"トルクバイアス比+1"倍)になる。
 この並行プリロード式は1WAYや1.5WAYでは、測定時の回転方向によってトルクバイアス比が異なるため、片輪リフト時駆動トルクの測定値が変わる。

 逆にイニシャルトルクと片輪リフト時駆動トルクの値を比べれば、搭載されているLSDのプリロードの方式が判別できる。
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2016年12月31日

クルマの帯電状況

 以前に、箔検電器を作った(参考:「ひらけ!箔検電器」)。これを使って、クルマのボディの帯電状況を徹底的に調べてみた。
 まず、本当に検出できるか確認した。フェンダライナやアンダーカバーをティッシュで擦って帯電させてから、箔検電器を当ててみると箔が大きく開いた。ティッシュで擦ったストローと同レベルの箔の開きだった。ただし、バンパは塗装のせいかティッシュで擦っても帯電させられなかった。
 また、帯電の維持される時間を調べると、2,3分で自然放電して箔検電器は反応しなくなることが分かった。クルマを止めて外装の帯電状況を調べる時は急ぐ必要がある。なお、風が強い日は放電が速くなるようだ(もしくはその日の湿度のせいかも)。
 次はいよいよ走行による帯電の確認だ。

 結論から言うと、全く帯電を検出できなかった。

 高速道路を走るたびにSAに駆け込んでは、クルマを飛び降りて素早くバンパやアンダーカバーやタイヤに箔検電器を当ててみたが箔は全く動かなかった。また、走行中にもフロントガラス、サイドガラス、ステアリングコラムに当てておいたが、これらも同じく箔は動かない。天候の影響も考えて、何度も日を変えては確認したが結果は同じだった。
 おそらく、走行による帯電は電圧がそんなに高くなく、そのため箔が開かないのではと推測される(箔検電器が開くには500〜1000Vの電圧が必要)。
 勝手な希望として「アルミテープを貼る前に箔検電器で帯電が確認でき、アルミテープを貼ったら帯電しなくなった」という結果を期待していたが、現実はそんなに甘くなかった。

 次はいよいよアルミテープを貼ってみて、官能評価をするしかあるまい。
 とういことで、「3M 導電性アルミ箔テープ」を購入した。あと、コロナ放電はエッジから発生するため、エッジを増やすためにギザギザに切れる「工作はさみ ギザッコU」も購入した。

導電性アルミテープ.jpg
 ちなみに、このギザッコUは素晴らしいレベルの工作精度で「さすが関の刃物」と言いたい。アルミテープも何の問題も無くスッパリ切れる。

 アルミテープを貼るのが今のタイミングになったのは、上記の帯電確認をやっていた以外にも理由がある。スタッドレスタイヤに交換するのを待っていたのだ。
 夏タイヤはハイグリップタイヤのせいか、高速走行でも操安に全く問題がなかったので、アルミテープによる改善効果が確認できないのではと思ったのだ。
 対して、スタッドレスは蒟蒻を踏んでるような、レスポンスの悪さ,ヨー収束の悪さ,ヨーゲインの低さ があるので、アルミテープによる空力安定の効果が分かりやすいと期待している。
 果たして、効果を体感できるだろうか?

'17.11.29追記:「アルミテープを貼ってみた
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2016年11月23日

官能評価の注意点

 このブログのアルミテープチューン関連の記事に、異例のコメント数がついていることからも分かるように、クルマ好きの間でかなり盛り上がっているようだ(参考:「続・アルミテープで空力チューン?」)。
 ネット上では、多くの人たちがいろいろ試して効果を報告しているが、気になるところがある。
 ほとんどの方は専門家ではないので、測定器を持ってるわけも無く、チューンの効果の確認は、実際に乗って五感で感じるだけの官能評価に頼らざるを得ない。しかし、官能評価には「先入観」という大きな問題がある。
 人間、効果があるはずだと思うチューンを施すと、物理的には効果が無くても、体感では効果があるように感じてしまうことがある。いわゆる"気のせい"だ。これを防ぐにはどうしたらよいだろうか?

1.ブラインドテストをしよう
 先入観の影響を排除する最も簡単な方法は、チューンがされているかされていないか分からない状態で評価することだ。ただ、これには協力者が必要になる。協力者にチューンを施す/施さないをランダムにしてもらい、どちらか分からない状態で評価を行う。最後に協力者と答え合わせをし、実際に体感できたかを確認する。10回繰り返して誤答が1回以下ならば、99%の確率で「効果がある」と言える(1%の確率でただの偶然の正解;二項分布から算出)。
 また、この時に評価者が協力者の行動を予測できないよう、例えば協力者はコイントスでチューンを施すかどうかを決めるといい。問題はコインの片側ばかりが出続けてしまうといった場合(確率は非常に低いがあり得る)だが、その時は回数を増やすしかないでしょう。

2.定量評価をしよう
 1.のブラインドテストで、効果の有無が体感できると分かったら、次は「どのくらい効果があるのか?」を評価しよう。また、簡単に着けはずしのできないチューンで、上記のような繰り返しのブラインドテストができない場合にも、厳密性を上げるのに有効だ。
 この時、多角的に評価できると良いので、レーダーチャートを作成するのがいい。例えばハンドリングについて記述するなら、直進安定性・応答性・ゲイン・リニアリティなどの軸を設定する。
 次に基準となるレベルを設定する。レベルの基準は異なる2つを設定すると比較がしやすい。例えば、応答性について、夏タイヤの時のレベルを4、冬タイヤの時を2とおいて、目的のチューンをした時にどのレベルになっているかを評価する。明確な比較の基準を作ることで、"気のせい"を排除しやすくなる。
 なので、日ごろから基準となるレベルを常に意識して体に染み込ませておかないといけない。例えば上記のタイヤによる差。エンジンなら、エアコンのコンプレッサを入れた時やライトを点けた時のトルクの食われ感や、気温による変化。転がり抵抗なら、雨の日の抵抗感や、わざとタイヤの空気圧を変えた時の差。空力なら、気温による変化や、大型トラックの後ろについた時の変化とか、わざと空力パーツを外してみた時の差。

 これらのことに気を付けると官能評価でも結構正確に評価できるはずだ。かなり大変だが、性能を評価するというのはダイエットと同じで楽な方法は無いのだ。
posted by まいすた at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月29日

帯電をチェック

 このブログのアクセス数が急増して驚いた。
 原因は、クルマのボディにアルミテープを貼って空力を改善するという手法が、自動車雑誌やネットニュースで紹介されたため、以前に書いた記事:「アルミテープで空力チューン?」他にアクセスする人が増えたためだった。

 それに関連して、走行するクルマは本当に帯電するのか確認することにした。
 帯電状況を調べるため、表面電位計を買おうかと思って調べたら、安いものでも5万円以上もしたので諦め、帯電リボンを作った。

帯電リボン.JPG
 写真は、ポリエチレン製のコンビニ袋を切り抜いた2枚のリボンを、樹脂パイプに取り付けたものだ。何故2枚なのかは、右の写真を見てもらえば分かるが、帯電するとリボンが互いに反発し合って開くので、帯電しているかどうかが一目瞭然になるのだ。
 リボンを帯電させる方法は、ティッシュで擦るだけで良い。コツは、リボンをティッシュで挟んだら素早く引くこと。引き切る最後の、リボンとティッシュが離れる瞬間を素早くすることで強く帯電する。帯電列を参照すると、ポリエチレンのリボンは、ティッシュによって負に帯電することが分かる。

帯電リボン-ストロー.JPG
 左の写真は、ストローを同じようにティッシュで擦って、負に帯電させたものを近づけた時のものだ。静電気の極性が同じため、斥力が発生してリボンが逃げている。
 右の写真は、そのストローを湿らせて、同じようにリボンに近づけたものだ。水分のせいで放電してしまったため、リボンは逃げずに静電気の作用でくっついた。
 ネットを見ると、例のアルミテープの評価を雨の中でやっている人を見受けるが、濡れたボディやタイヤは帯電しないので意味が無いのである。ご注意されたい。

 このリボンを持ってクルマの帯電状況を調べてみた。
 ボディが負に帯電していればリボンは反発し、帯電していなければリボンはくっつき、正に帯電していればリボンを近づけただけで引っ張られるはずだ。
 クルマを数kmほど走らせて、帯電させたリボンを各所に近づけてみる。まず、運転席でステアリングコラム、ステアリングホイール、フロントガラス、サイドウィンドウと調べるも、どこも帯電していないようだった。
 クルマの外に出て、フロントバンパサイド、リアスポイラ、タイヤなどを調べようとしたが、風に邪魔されてリボンの動きが観察できなかったので諦めた。ガレージがいるなあ。
 今回のテストでは帯電を確認できなかったが、走行距離は短いし、最近ずっとじめじめと湿度の高い天気なので、今後もっと長い走行距離・帯電しやすい気象条件で再確認してみたい。
 しかし、棒の先に白いリボンが付いたものを持って、クルマの周りで振りかざしていると、お祓いでもしているのかと誤解されそうだ。
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2016年08月17日

お尻のムレよさらば

 この時期バイクに乗る時の悩みは、暑さによるお尻のムレだ。ひどいと汗疹ができて、バイクを降りた後でも苦しむことになる。何とか対策をせねばと思い、「ナンカイ バイク用 メッシュカバー」を導入してみた。これはメッシュ状のシートカバーで、お尻と座面の間に通気可能な隙間を作るものだ。

 結果から言うと、「これは素晴らしい!」。

 この一夏使ってみたが、ムレがかなり軽減される。かといって、座り心地も悪くなく、スポーツライディング時の車体との一体感にも悪影響が感じられない(素人レベルの感想ですが)。クルマのシートに導入したら、ホールド性を著しく低下させてしまったクールクッションとは雲泥の差だ(参考:「通風クッション」)。

 だが、問題点が無いわけでは無い。
 バイクによっては、シートへの固定が難しい。前後2本のベルトでシートに巻き付けるだけなので、ベルトが挟まってシートの車体への嵌め込みを妨げたりする。個々のバイクのシートと車体の合わせ面の構造に合わせた工夫が必要になるだろう(私の場合、故意に前側のベルトを緩くしたり、シートと車体の合わせ面で後側ベルトが干渉しない位置に合わせたり)。
 他にも、カバーの厚さ分だけ座面が上がるので、背の低い人は足つき性に注意が必要。
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2016年05月31日

ホイール剛性の不都合な真実

 クルマの運動性にとって、ホイールの剛性は高い方がいいと思っていた。思っていたが、それを確認したデータを見たことが無かった。そのデータを見つけた。
 といっても確認した結果は「剛性は高い方がいい」というものではなかった。
 見つけた文献は、「平野 敦史:ホイール剛性が操縦安定性に及ぼす影響,自動車技術会学術講演会前刷集,No.9-14,(2014-5)」だ。著者の平野さんは、本田技研 四輪R&Dセンターのエンジニアだ(発表当時)。
 この文献の序文にも書かれているが、ホイール剛性と操縦安定性について、ほとんど定量的に評価されたことが無いようで、今までにデータを見たことが無かったのも当然だった。

 実験の内容は、純正ホイールとディスクやリムを補強した高剛性ホイールで車両の運動性を比較している。テスト車の車種は名言されていないが、スペックでは、2.4L直4エンジン、6速MT、FF2ドアクーペ、フロント:ストラット、リヤ:マルチリンク、全長:4473mm、ホイールベース:2670mm、車重:1275kgとなっている(該当車種が見当たらないが、試作車かな?)。

 試験結果は驚異的だった。
 純正ホイールに比べて、コーナリング限界(横G)が向上したのは、リムのみを補強したものだけだった。ディスクのみを補強したものでは純正より若干限界が低下し、リムとディスクを両方補強したものでは大幅に限界が低下しており、最高値のリムのみ補強に対して約9%も低くなっている。
 ホイールの剛性を十数%変えただけで、コーナリング限界がここまで変わってしまう。しかも、単純に剛性の大小が関係するのではなく、各部位の剛性バランスまで関係してくる。これはホイール選びにおいて、かなり悩ましいことになる。

 コーナリング限界の変化の原因は、接地面積の変化であり、単純に接地面積が増えるほど限界も向上していた。当然といえば当然だが、剛性の変化でホイールの変形状態が変わり、それに伴ってタイヤの接地面積が変わる。だが、タイヤに比べてはるかに変形量の少ないホイールの変形が、ここまでグリップに影響を及ぼすとは思わなかった。

 この結果から導かれる恐ろしい結論は、タイヤのグリップを引き出すのに、単にホイール剛性を上げれば良いのではなく、ボディー剛性、サスペンションの支持剛性、タイヤの特性などにマッチした最適な剛性バランスのホイールを設定しなければならないということだ。車種やタイヤ、サスセッティングによって最適なホイールは全く違ってくる。
 逆に、軽量鍛造アルミホイールの剛性が低いことも、一概に悪いこととは言えなくなった(参考:「鍛造ホイールは剛性が低い」)。
posted by まいすた at 01:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする